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バイオリン作りあれこれ

昔からヨ-ロッパでは各地方の山に樹勢するスプルース材「松、ヨーロッパ・トウヒともいう」とメープル材「カエデ」でバイオリンを作ってきました。バイオリンの表板、そして胴体の中に使われるブロック材、力木「バスバー」、補強材「ライニング」、魂柱などにはスプルース材を、裏板、横板、ネック材、駒などにはカエデ材が使われてきました。バイオリンは見た目にシンプルにできているようですが、実は細かい部品まで混ぜると材料と楽器に付いている附属物を合わせると55のパーツから出来ているのです。

昔、長野の工場から持ち帰ったのは一本のバイオリンと道具箱ひとつでした。家にはバイオリンを作る道具らしきものは何一つなく、バイオリンの横板を曲げる専門の道具さえもありませんでしたから、横板を曲げるのに太いハンダゴテを買ってきて曲げたり、鉄パイプを焼いて曲げたりと試行錯誤をしていた時期がありました。

木型

お菓子屋さんの木型や金物屋さんに金型があるように、物作りをするのにはまずは型を起こさないと始まりませんね。昔はもみの木でバイオリンの型を作った事もありましたし、木型屋で使う「ひめ小松」という松の木の板でつくたこともありました。この材料は柔らかく型には使いませんでした。或る時ある製作家から『型を作るには朴ノ木はくるいが無くていいよ』と言う話を聞き、それからバイオリンの型を朴ノ木で作るようになったのです。朴ノ木は柔らかく細工がしやすく、確かにくるいが少ない木だと思っています。

板はぎ

板はぎは楽器作りで最初にやらなければならない作業の一つですね。板はぎは簡単にいうと、二枚の板をそれぞれ削って板の平面、直角をだしニカワで接着することです。ニカワは昔から楽器の接着に使われてきた接着剤で、動物の骨や皮を精製して作りますが、ゼラチン、お菓子を作るゼラエースなどもこのニカワが原料です。板はぎ「表板・裏板」は木工技術の中でも難しい作業の一つですが、このはぎが出来ないと楽器は作れなくなってしまいます。作り方を文章で説明することも可能でしょうが、板はぎだけは実地に体験しないと解らないと思います。昔、木工の達人にいわれた言葉がありました。『仕事は見て覚えろ』と、それから『切れない刃物でやったんではうまい仕事はできないよ』と。心に沁みた言葉でした。この師匠から刃物の研ぎ方、板はぎ、その他木工技術を教わりました。

楽器のニスの美しさ

工場から家に戻って間もないころのこと、知り合いの牧師の紹介で東京の楽器製作者の家に行くことになったのです。初めてお目にかかった楽器は製作者の作った真っ赤に塗られたヴィオラでした。ヴィオラの裏板が澄んだ川底にゆらゆらと揺らいでいる水草のように裏板の虎目の模様が光の中に揺らいたのです。感動的な楽器でした。

弓はステック「stick」とも言います。弓はこれまでバイオリンとチェロの弓を数本しか作っていませんが、昨年「2020年」神戸の友人「病床にある」から頂いていたスネックウッドという硬い材料を使ってチェロの弓を作りました。今その自作の弓でチェロを弾いていますが、友人に感謝です。弓を作ってみて感じていることは、弓って何て不思議な木の棒なんだろうと思いました。楽器の持っている音色を引き出してくれるのは演奏者の表現能力であり、弓「bow」ですから。できればバイオリンの弓をもう一本作りたいものです。

カンナ

楽器のカンナには沢山の種類がありますが、カンナには西洋カンナと日本のカンナがあります。西洋カンナは押して削りますし、日本カンナは引いて削るという違いがあります。バイオリンの板を削るには主に豆カンナ「通称バイオリンカンナと言われるもの」を使って削ることが多いと思います。私は西洋カンナも使っていますが、板はぎをするような時には日本の長台鉋という鉋を使って作業をやっています。長台鉋は普通の鉋の台の長い鉋ですが、日本のカンナは鉋の刃と台を作らなければなりませんから大変です。

<刃物の研ぎと日本鉋について>

*刃物の研ぎについて

刃物研ぎは理屈抜きの修行の世界です。
刃物「鉋、ノミ等」は刃物の裏面が定規「平面」となりますから、手首の角度を変えないように、肩の力を抜いて押し研ぎ、引き研ぎを繰り返して研ぎます。丸刃にならないように注意。砥石には荒砥、中砥「青砥、他」、仕上砥「巣板、他」の種類がありますが、私は天然砥石を使って研ぎをやっています。主に中砥「青砥」を主に使っています。砥石は減ってきますから、私はガラス板に耐水ペ-パ-を敷いて擦り合わせて砥石の面を平らにして研ぎをやっています。「下端定規を対角線状にあてて確認」。私は刃物研ぎは呼吸法だと思っています。まさに修行の世界ですね。因みに、楽器作りには彫刻刀を使うこと多いと思います。彫刻刀には丸刃、平刃と色々な種類の彫刻刀がありますが、私はどのような種類の彫刻刀でも真平な砥石で研ぐことにしています。

*日本鉋について

私は板はぎをする時は長台鉋「平鉋」使って作業をしています。「長台鉋は普通の鉋の台の長い鉋」。前にも申し上げましたが、日本の鉋は刃と台を作らなければなりません。鉋の刃は鍛冶屋さんが地金と鋼を接着します。鉋の刃裏が基準面になりますから出来合いのままではだめで刃裏の平面を出す為に「裏押し」という作業「金盤に金剛粉をまいて研ぐ」をしなければなりません。又、刃先の鋼が減ってくれば「裏だし」という作業「地金を金槌で叩いて出す」をして刃先の鋼を出す作業をしなければなりません。当然刃先が減ってくれば切れなくなりますから。これは日本鉋を使う人が欠かせない作業の一つですね。金槌で強く叩くと刃を割ってしまう恐れがありますので注意が必要です。鉋の台は3点の平面を「中すき」だし、直角をだします。直角と平面がきちっとでていないと板はぎがうまくいきません。台の作り方も職種によっても違うようです。